自動運転エンジニアが語るCES 2024体験記
ティアフォーは CES 2024 で、新カメラやセンサーフュージョン技術のデモに加え、SDV 対応の SOAFEE/Autoware 連携や Co-MLOps プロジェクトを発表し、自動運転業界の標準化と開発効率化への貢献を強調した。
キーポイント
新ハードウェアとセンサーフュージョン技術の発表
高解像度カメラ C3 や GMSL2 インターフェース変換モジュール、Hailo-8 アクセラレーターを活用した LiDAR とカメラの融合セマンティックセグメンテーションなど、実証済みの新技術をライブデモで披露した。
Software-Defined Vehicles (SDV) への注力
SOAFEE フレームワーク上で Autoware を動作させるデモを行い、ハードウェア依存を排したソフトウェア主導型の開発・検証アプローチの重要性と、業界標準アーキテクチャ構築への参画を示した。
Co-MLOps プロジェクトによる開発エコシステムの強化
世界中から収集されたセンサーデータを共有可能にする Co-MLOps Platform の発表により、各社が独自 AI 開発を強化し、MLOps とエッジ AI リファレンスモデルを活用する仕組みを提案した。
マルチベンダー対応と冗長性の確保
異なるベンダーの LiDAR やカメラをユニバーサルドライバーで統合し、センサーの一部が故障してもシステムが正常に動作する冗長性を確認できるデモを実施した。
クラウドネイティブなシフト・レフト開発の実現
Arm Automotive PlatformとOpen AD Kitを活用し、ハードウェア準備前にクラウド上でソフトウェアを検証・デプロイするSDVサイクルを実現しました。
教育・研究用小型自動運転プラットフォームの展開
CanEduDevが開発した1:5スケールの「Demo Rover」やF1Tenthプロジェクトなど、低コストで実車実験が可能なOSS基盤がコミュニティに提供されました。
高速レーシングにおける極限環境とデータ戦略
IAC AV-24を用いた高速レースでは、GNSS受信不良やセンサーの熱・振動影響といった課題に対し、デジタルツインでの検証とデータ管理ストラテジーが重要となりました。
影響分析・編集コメントを表示
影響分析
この記事は、ティアフォーが単なる製品展示にとどまらず、SOAFEE や Co-MLOps といった業界標準アーキテクチャや開発プロセスの確立に積極的に関与していることを示しており、自動運転分野における「ハードウェア依存からの脱却」と「オープンなエコシステム構築」の潮流を象徴しています。特に、異なるベンダー機器を統合する技術とデータ共有基盤の発表は、今後の自動運転開発コスト削減とスピードアップに直結する重要な転換点となる可能性があります。
編集コメント
CES 2024 におけるティアフォーの動向は、ハードウェア中心からソフトウェア定義型車両への移行を加速させる具体的な技術実装と、業界全体での標準化への貢献を示す重要な指標となっています。特に Co-MLOps の発表は、開発現場の課題解決に向けた実践的なアプローチとして注目すべき内容です。
自動運転エンジニア目線の CES 2024 体験記
ティアフォーの自動運転ソフトウェアエンジニア、浅部佑です。今回、ティアフォーメンバーとして初めて CES 2024 に参加しましたので、その様子をご紹介します。
今年も 1 月 9 日から 12 日にかけて、ラスベガスで CES 2024 が開催されました。世界各国から数多くの企業が参加する中、ティアフォーも日本発のスタートアップとして出展しました。複数の製品の展示や最先端の技術のライブデモを行い、新しいグローバルプロジェクトも発表され、多くの来場者やパートナーとの議論を交わしました。
ラスベガス コンベンション センター 朝の様子
初日からティアフォーのブースはかなり注目されていました。ブースの大きさは昨年に比べて 3 倍になり、プロダクトやソリューションを効果的に説明できるよう、大きく 3 つのエリアに分けられていました。1 つ目のエリアには Robobus 車両が展示され、ホワイトレーベルのレベル 4 自動運転ソリューション「ファンファーレ」、自動運転ソフトウェア「Pilot.Auto」や DevOps プラットフォーム「Web.Auto」を紹介しました。その反対側のエリアでは、「Edge.Auto」のデモ実演や製品の展示、真ん中のエリアは、パートナーとのミーティングスペースとなっていました。
大きな窓と特徴的なフォルムの「Robobus」はブースの注目の的でもあり、多くの来場者が車両の中に入ってティアフォーメンバーに色々な質問をしていました。
CES 期間中にリファレンスプラットフォーム「Edge.Auto」を発表しました。Edge.Auto の各プロダクトやソリューションを展示しているエリアでは、主に 4 つのライブデモを実施しました。
Edge.Auto のデモスペース
1 つ目のデモではティアフォーで開発を進めている車載カメラと既存のカメラを比較しました。既存の C1 カメラと C2 カメラと比べると、今回新しくラインナップに追加された C3 カメラは解像度が非常に高いです。これらのカメラは GMSL2 インタフェースを利用し、LED flickering mitigation(LED ちらつき低減)などの機能も含まれます。
2 つ目は最大 8 台のカメラからの GMSL2 入力を 10Gbit イーサネットに変換するインターフェース変換モジュールのライブデモです。変換だけではなく、PTP(精密時刻同期プロトコル)を用いた他センサーとの時刻同期やシャッター制御、画像データの前処理やタイムスタンプ付与などの複雑なパーセプション処理に必要なタスクを担うモジュールとなります。
デモを実施するティアフォーのエンジニア
3 つ目は、2.5W の Hailo-8 アクセラレーターボードを活用してカメラと LiDAR(Light Detection and Ranging:光検出および距離測定)入力を用いたセマンティックセグメンテーション(セマセグ)を行うデモです。カメラと LiDAR 入力単体とフュージョンされたデータでのそれぞれのセマセグが行われ、画面にその結果が表示されます。デモでは、LiDAR やカメラの一方を手でブロックした場合でも、セマセグが正常に行われており、センサー構成の冗長性も確認することができます。
4 つ目は、ブース中央の大画面を用いたマルチベンダーの LiDAR・カメラのフュージョンデモです。異なるベンダーの LiDAR と C2 カメラのセット 3 つが、ブースを見渡せる高い位置に設置されています。ティアフォーが開発を進めるユニバーサルなセンサードライバーを活用することにより、ベンダー間のドライバーや仕様差異を吸収し、一つのパーセプションシステムとして利用可能になります。ブース内や周辺を行き来する来場者のトラッキングがエッジ ECU で行われ、リアルタイムに大画面に表示されます。
CES 期間中にティアフォーは、「Co-MLOps (Cooperative Machine Learning Operations)」プロジェクトの発表も行いました。
本プロジェクトにて開発する Co-MLOps Platform を導入することにより、世界中の様々な地域で収集されるカメラ画像や LiDAR(Light Detection and Ranging)点群などのセンサデータが共有可能となり、さらに Co-MLOps Platform 上で提供される MLOps 機能やエッジ AI のリファレンスモデルを活用することで、各社が独自の自動運転 AI 開発を強化できることが期待されます。
CES を通しての注目:Software-Defined Vehicles (SDV)
CES を通して注目されていたトピックが「Software-Defined Vehicles (SDVs)」です。様々なモビリティアプリケーションや車両内の機能をハードウェア依存しないソフトウェア率先型のアプローチで開発・検証・デプロイしていこう、という勢いが感じられました。
ティアフォーのブースでは SOAFEE フレームワーク上にアプリケーションとして Autoware を動作させるデモと展示を行っており、多くの注目を集めていました。
SOAFEE (Scalable Open Architecture for Embedded Edge special interest group (SIG)) は、自動車およびコンピューティング分野の企業が主導する団体で、SDV のためのオープンソースアーキテクチャを共同で構築することを目指しています。クラウドネイティブなアーキテクチャを使用した車両用の共有プラットフォームを作成し、複数のハードウェア構成に柔軟に対応できるようにすることが目標です。業界の協力を促進して新しいソフトウェアアーキテクチャや開発からデプロイまでの方法論を探ることにより、ベース車両ハードウェアやソフトウェアの新しい業界標準が形成されることが期待されています。それらの基本コンポーネントを組み合わせたり、再利用することにより、高度な AD (Autonomous Driving) および SDV アプリケーションの開発速度とデプロイまでのリードタイムを短縮することができます。ADAS (Advanced Driver Assistance System)、車内エンターテイメント、自動運転ソリューション、その他革新的な車両機能は、競争領域となります。
Autoware Foundation では、Autoware エコシステムに SDV(Software Defined Vehicle)開発のベストプラクティスをもたらし、最適化されたハードウェアおよびソフトウェアソリューションを提供する「Autoware Open AD Kit」に取り組んでいます。自動運転ソフトウェアとアプリケーションは、クラウド上で開発・テスト・検証された後、OTA(Over The Air:空中ダウンロード)アップデートを介してフリート車両に展開されます。
Arm Automotive Platform と緊密に連携しており、Open AD Kit はクラウドと実機車両の双方で Arm プロセッサ上で動作させることができ、クラウド上での開発・検証から車両へのデプロイまでをシームレスに行うことができます。このようなプラットフォームを活用することにより、ハードウェアが準備される前にソフトウェア側の開発・検証を可能とする、シフト・レフトな開発手法を実現できます。
Open AD Kit Blueprint
CES では、Arm とのライブデモを実施し、コンテナ化された Autoware コンポーネントと Open AD Kit プラットフォームを使用して、新しい AD(Autonomous Driving:自動運転)機能をクラウドネイティブな方法で展開できる方法を説明しました。事例として、Autoware のプランナーの動作ロジックを変えるためにプランナーのコードを一部修正するケースを取り上げました。
元の設計では、自己車両のレーン上で物標が検出されるとそこで完全停止するのですが、今回はプランナーを変更して、自己車両のレーン上で物標が検出されると車線変更を行い前進するようにします。
コードを適切に変更した後、SDV の検証およびデプロイサイクルを完了するには 3 つのステップが必要です。まず、新しく修正したソフトウェアに対して、Web.Auto Evaluator ソリューションによって提供されるシミュレータを介してクラウド上で機能検証を行います。機能が正常に動作していることが確認されると、その修正込みのコンテナはクラウドベースのバーチャル車両に展開され、そこで再度機能検証が行われます。このバーチャル車両は実機車両のハードウェアと ISA(Instruction Set Architecture:命令セットアーキテクチャ)レベルのパリティが保証されています。この検証が正常に完了すると、実機車両のソフトウェアが OTA 経由で更新されます。CES では、この SDV サイクルの各ステップがパートナーのそれぞれのブースで紹介されていました。
Autoware コミュニティからの「デモローバー」の展示
Autoware コミュニティからも面白い展示が提供されました。スウェーデン発スタートアップ「CanEduDev」が開発した小型のロボット車両「Demo Rover」をティアフォーのブース内にて展示しました。RC カーよりも大きく、ゴーカートよりは小さい 1:5 スケールの小型車両で、CAN(Controller Area Network:車載ネットワーク)システムも搭載されたフレキシブルな研究開発基盤です。Electronic Speed Controller (ESC) が後輪モーターを駆動し、前輪及び後輪でのステアが可能です。
Demo Rover のテスト走行。CanEduDev の Hashem Hashem 氏と Lars-Berno Fredriksson 氏
F1Tenth プロジェクトでは、小型車両の組み立て方やソフトウェアのリファレンス、学生向けの教材などを多数用意し、自動運転の教育や研究開発に大きな影響を与えました。コストも比較的かからず、シミュレーションに留まらず実車を用いて様々なアルゴリズムや研究を試せるプラットフォームとしてこれからも幅広く活用されていくことが期待されています。一方、一回り大きなサイズのゴーカートの自動運転化プロジェクトが UPenn などでは始まっており、それらのリソースも OSS として公開されています。CanEduDev の「Demo Rover」はその大きさと CAN のインテグレーション、ハードウェアやドキュメントの公開などの特徴から、今後の Autoware コミュニティでの活用が期待できます。まずは、LiDAR、カメラ、IMU、GNSS などのセンサー類や ECU の取り付け、Autoware のインテグレーションなどを通して自動運転化するところから始めてみたいです。
極限に迫る高速な自動運転レーシング
自動運転に関連する幅広い技術テーマはそれぞれ興味深く、特にアプリケーションに特化した自動運転では日々研究開発が行われており、そこから多くを学べます。その良い例が高速レーシング環境での自動運転です。CES の 3 日目には、ティアフォーメンバーや AWF パートナーと、Las Vegas Motor Speedway で開催される「Indy Autonomous Challenge (IAC)」を見に行きました。IAC は大学チーム対抗の自動運転レーシング大会を開催しており、年数回、世界各地の F1 サーキットでレースを実施しています。各チームには同一規格の車両が与えられ、そのハードウェアを最大限に活かした自動運転レーシングのソフトウェアで速さやオーバーテイクなどの走行ストラテジーを競い合います。IAC は今年は West Hall でも大きなブースを構えており、予選大会ともなるシミュレーション大会の上位チームの表彰式や新型車両モデルの発表などには多くの方々が来場していました。
新型車両「IAC AV-24」
IAC が今回発表した新型車両「IAC AV-24」は現在主に使われている AV-21 からハードウェア・ソフトウェア共に大きく更新されています。4 つの Luminar Iris を搭載し、それらのフュージョンで 360 度の LiDAR データを得られます。Continental の ARS540 レーダーや Allied Vision のカメラ、VectorNav や PointOne の GPS/GNSS、Cisco や Marelli の通信機器なども搭載されています。また、IAC は dSpace と協力し、実機での実走行前の開発・検証で用いることのできるデジタルツインのシミュレーション環境を用意しました。SIMPHERA ソフトウェアを内部で活用しており、各チームは、実機とほぼ同じ環境で自動運転アルゴリズムの検証を行ったり、データ収集などを行うことができます。
高速での自動走行に伴う車両ハードウェアやセンサーの極限状態の利用により、今まであまり把握されて来なかった新しい課題が浮き彫りになりました。もちろん高速でのステア制御や速度制御は難しく、振動や熱に伴うセンサー性能の変化や天候・環境に伴う各コンポーネントのチューニングなども課題です。トラックによっては、木々やトンネルなどにより GNSS 受信精度が悪化することもありますが、高速での走行時は、数秒間の受信不能や精度悪化でも致命的な場合があります。走行中は全てのセンサーから膨大なデータが収集され、チームにとってはどのデータに注目して分析リソースを割くかのマネジメント的なストラテジーも勝敗を分けます。
CES でのラスベガス大会では、Technical University of Munich の「TUM Autonomous Motorsport」とUniversity of Virginia の「Cavalier Autonomous Racing」が決勝で戦い、寒さや風など複雑な環境下で TUM が優勝しました。準決勝での TUM と KAIST とのレースでは、2 チームの自動走行レース車両はオーバーテイクのせめぎ合いで、一時車両同士の距離が 1.5m 未満にもなっていました。
追い越す瞬間を目の前で見ることができました!
日が暮れてからは新型車両の IAC AV-24 の自動走行デモが行われ、真っ暗な中を LED をピカピカさせながら複数の車両が高速走行を行いました。照明を一切付けずにあの暗闇の中のトラックをあの速さで走るのは、到底人間には真似できません。
Indy Autonomous Challenge
CES 全体を通して注目すべき他のトピック
WeRide はコンベンション・センター付近のラスベガス公道での自動運転の走行デモを行っていました。WeRide Robobus は LiDAR、HDR カメラ、レーダーなどを搭載しており、小型なバス車両に 10 人程が乗車できます。時速 40km ぐらいまでは出すことができ、交差点での減速、停止、発進などは快適であり、信号認識なども問題なくできていました。
次世代 LiDAR として注目されている 4D LiDAR (AEVA FMCW-based LiDAR & Alto Radar's Altos V Series) や SPAD LiDAR なども展示されていました。4D LiDAR は従来の 3D LiDAR が提供する XYZ 座標ベースの点群に加えて、点群の速度成分も計測することができます。これらの新しいセンサー群とティアフォーや Autoware が提供する Perception パイプラインを組み合わせることにより、物標認識の精度向上や効率化が図れます。
Luminar が実施していた Automatic Emergency Steering (AES) の実車デモも印象的でした。同社が開発した Iris+ LiDAR と「Proactive Safety」システムを使い、道路上の障害物を認識し、低遅延で回避行動を計画し実行します。高速な運転時で人間が対応できないクリティカルな状況で、システムが一時的に運転操作をオーバーライドし衝突などの事故を防ぐ仕組みです。
Luminar Live Stream
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www.youtube.com
昨年、Luminar は最先端の 3D LiDAR データを用いたマッピング技術を持つ Civil Maps を買収し、それ以来、全世界の正確な点群地図を作成・管理し、それを常時更新・アップデートする仕組みを手掛けてきました。Luminar の LiDAR(ライダー)が搭載された車両は世界中に展開されており、それらが見る世界を使い、最終的には世界各地の最も最新の点群地図を作りたい、というビジョンです。このような正確かつ新鮮な地図データは、高度な ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムなどの横展開にも活用できます。CES 中には、ラスベガス周辺を走行中の Luminar 搭載車両がセンシングしたデータを使って、リアルタイムにラスベガスの点群地図を作成・更新していくデモが行われており、その地図が時々刻々と拡大・上書きされていく様子が映し出されていました。
Sony Honda Mobility が発表した近未来感溢れる「AFEELA」はプレイステーション 5 のコントローラを使ってステージ上を走り、話題になっていました。
CES のオートモーティブ関連企業が集結してた West Hall では、大手 OEM(オリジナル・メーカー)に加えて新興 EV メーカーやスタートアップなど、比較的新しいプレイヤーの存在感が増していました。VinFast は新型 EV コンセプトの発表をし、Togg は新しい T10F セダンのリリースなどを行いました。
ティアフォーのメンバーとしては初めて CES に参加し、ブースでのプロダクト説明やパートナーとのミーティングなど刺激的で盛り沢山な 1 週間でした。自動運転を含むモビリティ業界は本当に幅広く、ステークホルダーやプレイヤーも多く、時々刻々と進化する技術によって業界全体の方向性やトレンドは常に変化しているように思えます。各社が最先端の技術で競い合う中、自動運転の社会受容性や高度な AI システムのガバナンス(統治)、オープンで公正な仕組みづくり等の課題は、皆が足並みをそろえて協調的に行っていく必要があります。特に EV や SDV(ソフトウェア定義車両)の台頭などにより、グローバルに活躍する企業の顔ぶれは変化しているとの声もあり、新興 EV メーカーや ADAS・AD 技術にフォーカスするスタートアップなど新しいプレイヤーが次々に世界各国から現れています。
ティアフォーのブースでも、ティアフォーや Autoware について既に知っていて詳しい内容を質問しに来られる方や、実際に協業やパートナーシップのお話を進めるためにご来場された方も多くいらっしゃいました。
自動運転ソフトウェアに焦点を当てて始まったティアフォーですが、ハードウェア開発や車両構築も積極的に始め、全国各地で実施する実証実験などを通してレベル 4 実現に向けての多くの経験とノウハウを得てきました。The Autoware Foundation を通して、グローバルでのポジションも確立しており、多くのパートナー企業や研究開発組織と一緒にオープンな AD(自動運転)開発の促進を率先しています。
CES 2024 最終日のティアフォーチーム!
Yu Asabe | 浅部 佑 System Component Team, Software engineer
東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程に在学中にティアフォーで学生エンジニア業務を開始。修士課程修了後、ティアフォーにフルタイムで入社。Autoware のコンポーネント間のインターフェイスや外部 API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を担当。V2I 通信によるインフラ協調を活用した自動運転機能の設計と実装にも携わる。また、Autoware を活用した自動運転コンペティションなどの企画運営も行っている。
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自動運転エンジニア目線のCES 2024体験記
ティアフォーの自動運転ソフトウェアエンジニアの浅部佑です。 今回ティアフォーメンバーとして初めてCES 2024に参加しましたので、その様子をご紹介します。
今年も1月9日から12日にかけて、ラスベガスでCES 2024が開催されました。世界各国から数多くの企業が参加する中、ティアフォーも日本発のスタートアップとして出展しました。複数の製品の展示や最先端の技術のライブデモを行い、新しいグローバルプロジェクトも発表され、多くの来場者やパートナーとの議論を交わしました。
ラスベガス コンベンション センター 朝の様子
初日からティアフォーのブースはかなり注目されていました。ブースの大きさは昨年に比べて3倍になり、プロダクトやソリューションを効果的に説明できるよう、大きく3つのエリアに分けられていました。1つ目のエリアにはRobobus車両が展示され、ホワイトレーベルのレベル4自動運転ソリューション「ファンファーレ」、自動運転ソフトウェア「Pilot.Auto」やDevOpsプラットフォーム「Web.Auto」を紹介しました。その反対側のエリアでは、「Edge.Auto」のデモ実演や製品の展示、真ん中のエリアは、パートナーとのミーティングスペースとなっていました。
大きな窓と特徴的なフォルムの「Robobus」はブースの注目の的でもあり、多くの来場者が車両の中に入ってティアフォーメンバーに色々な質問をしていました。
CES期間中にリファレンスプラットフォーム「Edge.Auto」を発表しました。Edge.Autoの各プロダクトやソリューションを展示しているエリアでは、主に4つのライブデモを実施しました。
Edge.Auto のデモスペース
1つ目のデモではティアフォーで開発を進めている車載カメラと既存のカメラを比較しました。既存のC1カメラとC2カメラと比べると、今回新しくラインナップに追加されたC3カメラは解像度が非常に高いです。これらのカメラはGMSL2インタフェースを利用し、LED flickering mitigationなどの機能も含まれます。
2つ目は最大8台のカメラからのGMSL2入力を10Gbitイーサネットに変換するインターフェース変換モジュールのライブデモです。変換だけではなく、PTPを用いた他センサーとの時刻同期やシャッター制御、画像データの前処理やタイムスタンプ付与などの複雑なパーセプション処理に必要なタスクを担うモジュールとなります。
デモを実施するティアフォーのエンジニア
3つ目は、2.5WのHailo-8アクセラレーターボードを活用してカメラとLiDAR (Light Detection and Ranging) 入力を用いたセマンティックセグメンテーション (セマセグ) を行うデモです。カメラとLiDAR入力単体とフュージョンされたデータでのそれぞれのセマセグが行われ、画面にその結果が表示されます。デモでは、LiDARやカメラの一方を手でブロックした場合でも、セマセグが正常に行われており、センサー構成の冗長性も確認することができます。
4つ目は、ブース中央の大画面を用いたマルチベンダーのLiDAR・カメラのフュージョンデモです。異なるベンダーのLiDARとC2カメラのセット3つが、ブースを見渡せる高い位置に設置されています。ティアフォーが開発を進めるユニバーサルなセンサードライバーを活用することにより、ベンダー間のドライバーや仕様差異を吸収し、一つのパーセプションシステムとして利用可能になります。ブース内や周辺を行き来する来場者のトラッキングがエッジECUで行われ、リアルタイムに大画面に表示されます。
CES期間中にティアフォーは、「Co-MLOps (Cooperative Machine Learning Operations)」プロジェクトの発表も行いました。
本プロジェクトにて開発するCo-MLOps Platformを導入することにより、世界中の様々な地域で収集されるカメラ画像やLiDAR(Light Detection and Ranging)点群などのセンサデータが共有可能となり、さらにCo-MLOps Platform上で提供されるMLOps機能やエッジAIのリファレンスモデルを活用することで、各社が独自の自動運転AI開発を強化できることが期待されます。
CESを通しての注目:Software-Defined Vehicles (SDV)
CESを通して注目されていたトピックが「Software-Defined Vehicles (SDVs)」です。様々なモビリティアプリケーションや車両内の機能をハードウェア依存しないソフトウェア率先型のアプローチで開発・検証・デプロイしていこう、という勢いが感じられました。
ティアフォーのブースではSOAFEEフレームワーク上にアプリケーションとしてAutowareを動作させるデモと展示を行っており、多くの注目を集めていました。
SOAFEE (Scalable Open Architecture for Embedded Edge special interest group (SIG)) は、自動車およびコンピューティング分野の企業が主導する団体で、SDVのためのオープンソースアーキテクチャを共同で構築することを目指しています。クラウドネイティブなアーキテクチャを使用した車両用の共有プラットフォームを作成し、複数のハードウェア構成に柔軟に対応できるようにすることが目標です。業界の協力を促進して新しいソフトウェアアーキテクチャや開発からデプロイまでの方法論を探ることにより、ベース車両ハードウェアやソフトウェアの新しい業界標準が形成されることが期待されています。それらの基本コンポーネントを組み合わせたり、再利用することにより、高度なAD (Autonomous Driving) およびSDVアプリケーションの開発速度とデプロイまでのリードタイムを短縮することができます。ADAS (Advanced Driver Assistance System)、車内エンターテイメント、自動運転ソリューション、その他革新的な車両機能は、競争領域となります。
The Autoware Foundationでは、AutowareエコシステムにSDV開発のベストプラクティスをもたらし、最適化されたハードウェアおよびソフトウェアソリューションを提供するAutoware Open AD Kitに取り組んでいます。自動運転ソフトウェアとアプリケーションは、クラウドで開発、テスト、検証された後、OTA (Over The Air) アップデートを介してフリート車両に展開されます。
Arm Automotive Platformと緊密に連携しており、Open AD Kitはクラウドと実機車両の両方のArmプロセッサで動作させることができ、クラウドでの開発・検証から車両へのデプロイまでをシームレスに行うことができます。このようなプラットフォームを活用することにより、ハードウェアの準備が整う前に、ソフトウェア側の開発・検証を可能とする、シフト・レフトな開発手法を実現できます。
Open AD Kit Blueprint
CESでは、Armとのライブデモを実施し、コンテナ化されたAutowareコンポーネントとOpen AD Kitプラットフォームを使用して、新しいAD機能をクラウドネイティブな方法で展開できる方法を説明しました。Autowareのプランナーの動作ロジックを変えるためにプランナーのコードを一部修正するケースを事例として取り上げました。
元の設計では自己車両のレーン上で物標が検出されると、そこで完全停止するのですが、今回はプランナーを変更して、自己車両のレーン上で物標が検出されると、車線変更を行い前進するようにします。
コードを適切に変更した後、SDVの検証およびデプロイサイクルを完了するには、3つのステップが必要です。まず、新しく修正したソフトウェアに対して、Web.Auto Evaluatorソリューションによって提供されるシミュレータを介してクラウドで機能検証を行います。機能が正常に動作していることが確認されると、その修正込みのコンテナはクラウドベースのバーチャル車両に展開され、そこで再度機能検証が行われます。このバーチャル車両は実機車両のハードウェアとISAレベルパリティが保証されています。この検証が正常に完了すると、実機車両のソフトウェアがOTA経由で更新されます。CESでは、このSDVサイクルの各ステップがパートナーのそれぞれのブースで紹介されていました。
Autowareコミュニティからの「デモローバー」の展示
Autowareコミュニティからも面白い展示が提供されました。スウェーデン発スタートアップ「CanEduDev」が開発した小型のロボット車両「Demo Rover」をティアフォーのブース内にて展示しました。RCカーよりも大きく、ゴーカートよりは小さい1:5スケールの小型車両で、CANシステムも搭載されたフレキシブルな研究開発基盤です。Electronic Speed Controller (ESC) が後輪モーターを駆動し、前輪及び後輪でのステアが可能です。
Demo Roverのテスト走行。CanEduDevのHashem Hashem氏とLars-Berno Fredriksson氏
F1Tenthプロジェクトでは、小型の車両の組み立て方やソフトウェアのリファレンス、学生向けの教材などを多く用意し、自動運転の教育や研究開発に大きな影響を与えました。コストも比較的かからず、シミュレーションに留まらず実車を用いて色々なアルゴリズムや研究を試せるプラットフォームとしてこれからも幅広く活用されていくことが期待されています。一方、一回り大きなサイズのゴーカートの自動運転化プロジェクトがUPennなどでは始まっており、それらのリソースもOSSとして公開されています。CanEduDevの「Demo Rover」はその大きさとCANのインテグレーション、ハードウェアやドキュメントの公開などの特徴から、今後のAutowareコミュニティでの活用が期待できます。まずは、LiDAR、カメラ、IMU、GNSSなどのセンサー類やECUの取り付け、Autowareのインテグレーションなどを通して自動運転化するところから始めてみたいです。
極限に迫る高速な自動運転レーシング
自動運転に関連する幅広い技術テーマはそれぞれ興味深く、特にアプリケーションに特化した自動運転では日々研究開発が行われており、そこから多くを学べます。その良い例が高速レーシング環境での自動運転です。CESの3日目には、ティアフォーメンバーやAWFパートナーと、Las Vegas Motor Speedwayで開催される「Indy Autonomous Challenge (IAC)」を見に行きました。IACは大学チーム対抗の自動運転レーシング大会を開催しており、年数回、世界各地のF1サーキットでレースを実施しています。各チームには同一規格の車両が与えられ、そのハードウェアを最大限に活かした自動運転レーシングのソフトウェアで速さやオーバーテイクなどの走行ストラテジーを競い合います。IACは今年はWest Hallでも大きなブースを構えており、予選大会ともなるシミュレーション大会の上位チームの表彰式や新型車両モデルの発表などには多くの方々が来場していました。
新型車両「IAC AV-24」
IACが今回発表した新型車両「IAC AV-24」は現在主に使われているAV-21からハードウェア・ソフトウェア共に大きく更新されています。4つのLuminar Irisを搭載し、それらのフュージョンで360度のLiDARデータを得られます。ContinentalのARS540レーダーやAllied Visionのカメラ、VectorNavやPointOneのGPS/GNSS、CiscoやMarelliの通信機器なども搭載されています。また、IACはdSpaceと協力し、実機での実走行前の開発・検証で用いることのできるデジタルツインのシミュレーション環境を用意しました。SIMPHERAソフトウェアを内部で活用しており、各チームは、実機とほぼ同じ環境で自動運転アルゴリズムの検証を行ったり、データ収集などを行うことができます。
高速での自動走行に伴う車両ハードウェアやセンサーの極限状態の利用により、今まであまり把握されて来なかった新しい課題が浮き彫りになりました。もちろん高速でのステア制御や速度制御は難しく、振動や熱に伴うセンサー性能の変化や天候・環境に伴う各コンポーネントのチューニングなども課題です。トラックによっては、木々やトンネルなどによりGNSS受信精度が悪化することもありますが、高速での走行時は、数秒間の受信不能や精度悪化でも致命的な場合があります。走行中は全てのセンサーから膨大なデータが収集され、チームにとってはどのデータに注目して分析リソースを割くかのマネジメント的なストラテジーも勝敗を分けます。
CESでのラスベガス大会では、Technical University of Munichの「TUM Autonomous Motorsport」とUniversity of Virginiaの「Cavalier Autonomous Racing」が決勝で戦い、寒さや風など複雑な環境下でTUMが優勝しました。準決勝でのTUMとKAISTとのレースでは、2チームの自動走行レース車両はオーバーテイクのせめぎ合いで、一時車両同士の距離が1.5m未満にもなっていました。
追い越す瞬間を目の前で見ることができました!
日が暮れてからは新型車両のIAC AV-24の自動走行デモが行われ、真っ暗な中をLEDをピカピカさせながら複数の車両が高速走行を行いました。照明を一切付けずにあの暗闇の中のトラックをあの速さで走るのは、到底人間には真似できません。
Indy Autonomous Challenge
CES全体を通して注目すべき他のトピック
WeRideはコンベンション・センター付近のラスベガス公道での自動運転の走行デモを行っていました。WeRide RobobusはLiDAR、HDRカメラ、レーダーなどを搭載しており、小型なバス車両に10人程が乗車できます。時速40kmぐらいまでは出すことができ、交差点での減速、停止、発進などは快適であり、信号認識なども問題なくできていました。
次世代LiDARとして注目されている4D LiDAR (AEVA FMCW-based LiDAR & Alto Radar’s Altos V Series) やSPAD LiDARなども展示されていました。4D LiDARは従来の3D LiDARが提供するXYZ座標ベースの点群に加えて、点群の速度成分も計測することができます。これらの新しいセンサー群とティアフォーやAutowareが提供するPerceptionパイプラインを組み合わせることにより、物標認識の精度向上や効率化が図れます。
Luminarが実施していたAutomatic Emergency Steering (AES)の実車デモも印象的でした。同社が開発したIris+ LiDARと「Proactive Safety」システムを使い、道路上の障害物を認識し、低遅延で回避行動を計画し実行します。高速な運転時で人間が対応できないクリティカルな状況で、システムが一時的に運転操作をオーバーライドし衝突などの事故を防ぐ仕組みです。
Luminar Live Stream
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昨年、Luminarは最先端の3D LiDARデータを用いたマッピング技術を持つCivil Mapsを買収し、それ以来、全世界の正確な点群地図を作成・管理し、それを常時更新・アップデートする仕組みを手掛けてきました。LuminarのLiDARが搭載された車両は世界中に展開されており、それらが見る世界を使い、最終的には世界各地の最も最新の点群地図を作りたい、というビジョンです。このような正確かつ新鮮な地図データは、高度なADASや自動運転システムなどの横展開にも活用できます。CES中には、ラスベガス周辺を走行中のLuminar搭載車両がセンシングしたデータを使って、リアルタイムにラスベガスの点群地図を作成・更新していくデモが行われており、その地図が時々刻々と拡大・上書きされていく様子が映し出されていました。
Sony Honda Mobilityが発表した近未来感溢れる「AFEELA」はプレイステーション5のコントローラを使ってステージ上を走り、話題になっていました。
CESのオートモーティブ関連企業が集結してたWest Hallでは、大手OEMに加えて新興EVメーカーやスタートアップなど、比較的新しいプレイヤーの存在感が増していました。VinFastは新型EVコンセプトの発表をし、Toggは新しいT10Fセダンのリリースなどを行いました。
ティアフォーのメンバーとしては初めてCESに参加し、ブースでのプロダクト説明やパートナーとのミーティングなど刺激的で盛り沢山な1週間でした。自動運転を含むモビリティ業界は本当に幅広く、ステークホルダーやプレイヤーも多く、時々刻々と進化する技術によって業界全体の方向性やトレンドは常に変化しているように思えます。各社が最先端の技術で競い合う中、自動運転の社会受容性や高度なAIシステムのガバナンス、オープンで公正な仕組みづくり等の課題は、皆が足並みをそろえて協調的に行っていく必要があります。特にEVやSDVの台頭などにより、グローバルに活躍する企業の顔ぶれは変化しているとの声もあり、新興EVメーカーやADAS・AD技術にフォーカスするスタートアップなど新しいプレイヤーが次々に世界各国から現れています。
ティアフォーのブースでも、ティアフォーやAutowareについて既に知っていて詳しい内容を質問しに来られる方や、実際に協業やパートナーシップのお話を進めるためにご来場された方も多くいらっしゃいました。
自動運転ソフトウェアに焦点を当てて始まったティアフォーですが、ハードウェア開発や車両構築も積極的に始め、全国各地で実施する実証実験などを通してレベル4実現に向けての多くの経験とノウハウを得てきました。The Autoware Foundationを通して、グローバルでのポジションも確立しており、多くのパートナー企業や研究開発組織と一緒にオープンなAD開発の促進を率先しています。
CES 2024最終日のティアフォーチーム!
Yu Asabe | 浅部 佑 System Component Team, Software engineer
東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程に在学中にティアフォーで学生エンジニア業務を開始。修士課程修了後、ティアフォーにフルタイムで入社。Autowareのコンポーネント間のインターフェイスや外部APIを担当。V2I通信によるインフラ協調を活用した自動運転機能の設計と実装にも携わる。また、Autowareを活用した自動運転コンペティションなどの企画運営も行っている。
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