動画記事 · AI Engineer
アジェンティック・コマース・スタック — Ahnaf Prio、ベストバイ
動画の文字起こしと公開情報をもとにAIで要約・構成しています。 正確な発言は元動画と時間位置で確認してください。
まず要点
ベストバイのエンジニアが、AI エージェントによるショッピングの実装モデルと、ACP/UCP/AP2といった標準プロトコルの現状を解説する。
AI が実際に商品を買う時代へ:ベストバイが語る「アジェンティック・コマース」の実装と課題
生成 AI が単なる情報検索の枠を超え、実際の購入や決済まで代行する「アジェンティック・コマース(Agent Commerce)」の実現に向けた技術的基盤が、Best Buy のエンジニアマネージャーである Anup Priyo 氏によって語られました。現在の主流は人間が関与する段階ですが、完全自律型への移行には、OpenAI や Google が提唱する異なるプロトコルの統合と、厳格な評価(Evals)フレームワークの確立が不可欠です。
現在地:45% のセッションで「人間が介在」するショッピング
アジェンティック・コマースとは、AI アシスタントが商品の発見、必要性の検討、価格交渉、決済、配送までを支援する概念ですが、現状は完全自律型ではありません。主要な AI プラットフォームである ChatGPT や Google Gemini におけるセッションの約 45% がショッピング関連に占められており、ユーザーは AI に相談しつつも、最終的な決定や操作には人間が介在している「Human-in-the-loop(人間が関与する形態)」が主流です。
「理想の状態は、ユーザーが『これ欲しい』と言うだけで、AI エージェントが商家と交渉し、支払いまで完了させる完全自律型ショッピングです。しかし現在は、まだ人間が介在する段階にあります。」
過去 1 年間で試みられたブラウザ拡張機能による自動化(例:Chrome の拡張機能で AI が DOM を読み込んでフォームに入力するなど)は、技術的に脆く、動作も重いため失敗しました。商家側から見れば、AI が人間を装ってアクセスすることはセキュリティ上のアラートを触发しやすく、決済フローでつまずくケースが多発していました。
しかし、現在の ChatGPT ショッピングや Google AI モードは、ブラウザ操作に頼らず、API を介してスムーズに商品情報を取得し、カートへの追加や決済を処理しています。この市場規模は現在 70 億ドル(約 1 兆円)を超え、2030 年には 650 億ドル(約 9.8 兆円)に達すると予測されています。
プロトコルの群雄割拠:ACP、UCP、そして標準化の壁
この急速な進化を支えるために、各企業が独自のプロトコルを策定しています。OpenAI は「ACP(Agent Commerce Protocol)」を、Google は「UCP(Universal Commerce Protocol)」を発表しました。また、Meta や Microsoft もそれぞれ独自の動きを見せています。
これらのプロトコルは、顧客がカートに商品を追加する行為と、商家側でそれが「2 番目の行項目」として扱われるという視点の違いを埋めるためのものです。規格が統一されなければ、システム間の連携は依然として非効率で脆いままです。
主要なプロトコルと役割
- MCP(Model Context Protocol): エージェントが持つツールへのアクセス権限を定義する基盤です。エージェントが「商品を検索する」「詳細を確認する」「ロイヤリティ情報を取得する」といった機能を、どのツールを使って実行するかを特定するために不可欠です。
- A2A(Agent-to-Agent Protocol): ドメイン固有のエージェント間、あるいは顧客のエージェントと商家のエージェント間の通信を標準化する仕様です。異なるエージェントが互いに連携してタスクを完了させるための言語となります。
- ACP と UCP: 商品データの連携や決済フローの基盤となる「プリミティブ(基本要素)」を提供します。特に商品データについては、PDP(製品詳細ページ)をクロールするのではなく、商家側から構造化されたフィード(商品リスト)を受け取る形式が採用されています。
「商品データは頻繁に更新されるため、検索カタログとして呼び出すのではなく、事前にフィードを送り込んでインデックス化しておく方が効率的です。しかし、スポンサー製品やレコメンドのランキングなど、商家側のビジネス要件により、各社で異なる仕様が採用されています。」
Meta のプロダクトフィードを見ても、フォーマットは似ていますが詳細が異なり、統一された標準への道はまだ遠いのが実情です。
決済と自律化:AP2 と「人間を介在させる」現実
完全自律型ショッピングの実現において最大の障壁となっているのは決済です。現在の ACP や UCP では、X402(Web3 の支払いプロトコル)のような完全な自動化はサポートされていません。責任やリスクの所在を明確にするため、商家と決済プロセッサが連携し、人間が関与する形での承認が必要な段階となっています。
- ChatGPT: 共有された支払いトークン(Shared Payment Token)を経由して決済を行います。
- Google Gemini (UCP): Google Pay を介した決済のみをサポートしています。
完全な自律化に向けた次世代の仕様として、Google が公開している「AP2(Agentic Payment Protocol)」が注目されています。これは、エージェントに権限を与えるための詳細なプロトコルです。
「AP2 では、『誰がエージェントを承認したか』『何を購入できるか』『交渉可能な最大金額は何か』『権限の取り消し URL はどこか』といった情報を定義します。これにより、ユーザーの同意とセキュリティを担保しつつ、自律的な決済が可能になります。」
実証デモ:猫のジェニーが bakery エージェントとして活躍
Anup 氏は、自身の猫「ジェニー」を架空のベーカリー経営者(Merchant Agent)に扮させたデモを通じて、実際の動作フローを披露しました。
- 商品検索: ユーザーが「商品について教えて」と指示すると、エージェントは MCP ツール呼び出しを行い、商家のエージェントと A2A プロトコルで通信して商品リストを取得します。
- カート追加と交渉: 「ショートブレッドをカートに入れて」と指示。ユーザーが割引コードを忘れた際、AI が「割引コードを知っていますか?」と問いかけ、ユーザーが「知らない」と答えると、そのまま決済へ進む提案を行います。
- 決済フロー: UCP プロトコルに基づき、チェックアウト API のステータス(支払い準備中→完了)を追跡。AP2 を採用したデモでは、権限付与と決済実行がスムーズに行われました。
このデモは、MCP と A2A が連携することで、複雑な交渉や情報取得を人間の手を介さずに行う可能性を示すものでしたが、最終的な決済には依然として何らかの承認プロセス(トークンやプロトコル)が必要であることが確認できました。
必須要件:評価(Evals)なしに自律型は存在しない
技術的な実装だけでなく、AI エージェントの安全性を担保するための「評価(Evals)」が最も重要な課題として挙げられました。テストを行わないまま AI に権限を与えると、意図しない質問への回答やセキュリティリスクが発生する恐れがあります。
「AI エージェントの動作を検証しないまま運用することは危険です。厳格なテストフレームワークなしには、自律型ショッピングは実現できません。」
開発者は、エージェントがどのような条件下で正しく動作し、誤った判断をしないかを検証する仕組みを必ず実装する必要があります。
まとめ
アジェンティック・コマースは、すでに 45% のセッションで人間と AI が協働する形で始まっています。完全自律型への移行には、ACP や UCP といったプロトコルの標準化、AP2 を介した安全な決済基盤の整備、そして何よりも厳格な評価(Evals)による安全性の担保が不可欠です。EC 業界は、これらの技術的課題を乗り越え、AI が実際に取引を実行するエコシステムへと進化していく段階にあります。
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