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完全ワークショップ:自身でディープリサーチエージェントを構築する方法
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まず要点
Towards AIチームが、MCPサーバーを活用したディープリサーチエージェントとライティングエージェントの構築プロセスを公開し、AIエンジニアリングにおける自律性と制御のバランスについて解説する。
完全ワークショップ:自身でディープリサーチエージェントを構築する方法
LLM によるコンテンツ生成が普及する一方で、「AI スロップ」と呼ばれる浅薄で事実誤認を含む文章が増加しています。この課題を解決し、人間の手触りあるストーリーテリングと AI の調査力を融合させるには、単なるプロンプトの改良ではなく、自律性の度合いを設計段階から明確に定義した「エージェントシステム」の構築が不可欠です。
本記事では、Towards AI 創設者らが実装した「ディープリサーチエージェント」と「ライティングエージェント」の実践例を通じて、複雑な AI システムをどう設計し、MCP(Model Context Protocol)を活用して実務レベルで動かすかという核心を解説します。
「AI スロップ」の壁と、人間との共存戦略
現在の LLM 生成コンテンツには深刻な欠陥があります。チャット GPT に質問しても得られるのは「非常に一般的な回答」や、事実関係が古く、意味のない「〜についてではなく、別の何か」といった定型句です。これを AI エンジニアリング界隈では「スロップ(廃棄物)」と呼びます。
「AI スロップは、何らかの価値も提供せず、何も有用ではありません」
Towards AI のチームが直面した課題も同様でした。技術コンテンツやコース制作には、シニアレベルのエンジニアによる深いリサーチと、人間ならではのストーリーテリングが必要です。しかし、このプロセスを完全な人手で行うのはコストが高すぎます。
彼らが目指したのは、このプロセスの自動化ではなく、「人間の専門性」と「AI の調査力」を組み合わせるハイブリッドシステムです。具体的には、独自のディープリサーチエージェントがウェブやツールを検索し、信頼性の高い情報を収集。その後、別のライティングエージェント(あるいは人間)が、それを基に高品質な技術記事を作成するというワークフローを構築しました。
自律性のスライダー:どこまで AI に任せるか?
AI システムを設計する際、最も重要なのは「どこまで AI に自律性を委ねるか」という判断です。これは自律性のスライダーとして捉えることができます。
- プロンプティング: 最も単純で制御性が高いが、複雑なタスクには不向き。
- ワークフロー(オーケストレーション): 事前に定義されたステップを順次実行。ルーターや並列処理を用いて効率化できますが、動的な判断は行えません。
- エージェント: 環境の変化に応じて自律的に行動し、ツールを選択・計画します。複雑さとコストが増加する一方、制御性は低下します。
「常に最も単純な解決策を使いたいものです。単なるプロンプトで済むならそれが理想です」
多くの企業が失敗するのは、このスライダーを誤って「エージェント側」に傾けすぎることです。例えば、クライアントの CRM 向けチャットボット開発において、最初は何度も異なるエージェントを組み合わせるマルチエージェントシステムを提案されましたが、実際の業務フローは「受信→分類→ルーティング→回答作成→検証→送信」という単純な直線型でした。
この場合、複雑なエージェントシステムを導入してもオーバーヘッドが増えるだけで価値はありません。重要なのは、タスクが動的に分岐する必要があるかを問うことです。もし手順が常に同じであれば、それは「ワークフロー」で十分です。自律性が必要な場面は、「どの API を呼ぶか」「データベースにどう書き込むか」といった動的な判断が発生する場合に限られます。
2 つのシステム:探索的なリサーチと決定論的なライティング
Towards AI が最終的に採用したのが、「リサーチエージェント」と「ライティングエージェント」を分けるアーキテクチャです。これは、両者の性質が根本的に異なるためです。
- リサーチエージェント(探索的・自律的):
- 目的:未知の情報を発見し、信頼できるソースを検証する。
- 要件:柔軟性が必要。ウェブを探索し、情報不足を感じれば方向転換し、自己フィードバックループで改善する必要があります。
- ライティングエージェント(決定論的・制約あり):
- 目的:特定のトーンや構造に従って記事を作成する。
- 要件:柔軟性よりも「制約」が重要。ハルシネーションを避け、一貫したスタイルで出力する必要があります。
このように役割を分離することで、リサーチの自由度とライティングの品質保証を両立させています。また、リサーチ結果は人間がレビューし、最終的なストーリーテリング(ジョークや文脈に即した表現など)には人間のフィードバックループを残すことで、AI 特有の「冷たさ」を排除しています。
MCP と Claude Code を活用した実装パターン
自律性を定義したら、次は具体的な実装です。Towards AI が採用したのは、MCP(Model Context Protocol)とClaude Codeを組み合わせたアプローチです。
MCP は、AI モデルが外部ツールやデータを安全かつ標準的な方法で呼び出すためのプロトコルです。これにより、開発者は独自のツールを簡単に公開・利用でき、エージェント間の相互運用性が飛躍的に向上します。
実装のポイントは以下の通りです。
- 動的なツール呼び出し: エージェントは、タスクに応じて YouTube 分析や Web 検索などのツールを動的に呼び出します。Claude Code を介して MCP サーバーと連携させることで、モデルが「何をするべきか」を計画し、実行する自律的な動作が可能になります。
- コンテキスト管理の最適化: エージェントが複雑化するほど、会話履歴やシステムプロンプト、ツール定義などが膨大になり、「真ん中の欲求不満問題(Lust in the middle problem)」と呼ばれる性能低下が発生します。これを防ぐため、ツールやサブエージェントへの委任が有効です。
- 各ツールやサブエージェントに独自のコンテキストを持たせることで、メインのエージェントのコンテキストウィンドウを圧迫しません。
- 例えば、検証専用のツールや、特定のフォーマットに特化したツールを独立させて管理します。
「ツールは専門家として使い、グローバルな文脈(意思決定)は唯一のエージェントの中に留める」
この設計により、20 万トークンを超える大規模なコンテキストでも、モデルの性能を維持しながら複雑なタスクを処理できます。
評価と検証:品質を保証するバイナリジャッジ
最終的に、構築したシステムが機能しているかを確認するには、厳格な評価が必要です。Towards AI では、以下の指標を用いて品質を測定しています。
- バイナリ要素ジャッジ: 特定の事実や要件が満たされているかを Yes/No で判定する簡易的な検証。
- F1 スコア: 検索結果の精度(Precision)と再現率(Recall)の調和平均を用いて、情報の網羅性と正確性を数値化。
- 人間のレビュー: 最終的に AI が生成したコンテンツは、必ず人間がチェックし、トーンや文脈の適切さを確認します。
「AI プロダクトは単にエージェントを構築するだけではありません。ツール、ワークフロー、評価システムを統合して初めて真価を発揮します」
まとめ
AI エージェント開発において重要なのは、技術的な複雑さを追うことではなく、「自律性のスライダー」を適切に設定し、タスクの性質(探索的か決定論的か)に合わせてシステムを設計することです。MCP 標準の普及により、独自のツールを組み合わせるエコシステムが形成されつつある今、Towards AI のような「リサーチとライティングを分離し、人間フィードバックをループに組み込む」アプローチは、エンタープライズレベルでの AI システム構築における重要なベストプラクティスと言えます。
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